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『ノーベル平和賞最年少受賞・マララさんの父親であるジアウディン氏が来日!
スーパーダディ協会×ジアウディン氏 交流イベント詳報』Vol.1

 
 
今年の3月下旬のこと。史上最年少でノーベル平和賞を受賞し、現在は英国オックスフォード大学で学びながら女子教育の向上のために活動を続けるマララ・ユスフザイさんが初来日した。東京で開催された「第5回国際女性会議WAW!/W20」に出席するために訪れたのだが、それと時を同じくして来日したのが、マララさんの父親、ジアウディン・ユスフザイさん。現在では「マララ財団」の共同設立者・理事として「安全で質の高い教育をすべての女性が受けられる社会実現」を目指して活動を続けている。


マララさんが理事を務める「マララ財団」より、スーパーダディ協会の事務局に「日本のダディたちと交流したい」とのオファーがあり、同イベント開催中の3月24日、都内のレストラン「THE BURN」にて、ワールドワイドに活躍する“真のスーパーダディ”とも言えるジアウディンさんと、日本のスーパーダディを目指して活動するメンバーたちの交流イベントが開催された。


その時の模様のレポートは『こちら』をご覧ください。

 
当記事では、真のスーパーダディであるジアウディンさんが、日本のダディたちに伝えた強烈なメッセージをあますところなくお伝えします。

 
 
動画はこちらからご覧いただけます ↓ 




『私はヒゲを生やしたフェミニスト』
〜家庭内の平等を大切にし、子どもに行動で示すことから始めよう〜
 


 

【家父長制の中で育った】

 
まず、お礼を言わせていただきます。スーパーダディ協会はとっても素晴らしい組織だと思います。そして、素晴らしい偶然ですよね。SDAのシンボルマークが口ひげですよね。私にも口ひげがあります(笑)。このSDAの口ひげのシンボルマークを見て、SDAのみなさんにとても親しみが湧きました!



  改めまして、私はジアウディン・ユスフザイと申します。マララの父親であることを誇りに思っています。まずは、私の子ども時代のお話からしたいと思います。私が生まれたパキスタン北部は、家父長制が色濃く残る土地柄でした。もちろん、私も家父長制を踏襲する家族の元で生まれ育ったのです。
 
私には5人の姉妹と1人の兄がいましたが、5人の姉妹は学校に通わせてもらえず、私と兄だけが学校に通うことを許されたのです。私の5人の姉妹は、同じひとつの家族であるにも関わらず、男女の違いによる不平等と差別に苦しんでいたのです。
 
例えば、食事。美味しいおかずは男性だけが食べるのです。女性には美味しいおかずは与えられませんでした。服や靴もそうでした。男性だけに良いモノが与えられ、女性たちには使い古したものしか与えられなかったのです。
 

 

【家父長制の流れを自分が変えていくと誓う】


そして、何よりも大きな差別と言えるのは、私の5人の姉妹たちが“学校に行かせてもらえない”ということでした。教育を受けさせてもらえなかった。もし、私が両親の元で女の子として産まれていたとしたら、この世界の誰もが私の存在を知ることはなかったことでしょう。しかし、そんな家父長制のなかで育った私を変えたのが教育でした。

私は子どもの頃、どもりがひどかったんです。そのため、度々クラスメートにイジメられました。そんな経験をするなかで、私はある信念を持つようになりました。それは、「いかなる人も、差別されてはならない」ということです。障害であるとか、肌の色であるとか……、私はどんな理由においても差別は決して許されないと思うようになっていったのです。

 
そして、私は気づきました。「どんなジェンダーであれ、すべてにおいて平等に扱われるべきである」と。そして、私が父親になって娘を持つようになったら、決して私は自分の父のようにはしない。この色濃く残る家父長制の流れを自分が変えていくんだと心に誓ったのです。
  
 

【「マララ」という名前に込めた願い】

 
両親は私に医者であるとか技術者など、社会的地位のある職業に就いて欲しいと願っていました。一方、5人の姉妹については、「早く結婚して、子どもを作りなさい」としか考えていませんでした。

私が実際に娘の父親になったとき、私は娘に「マララ」と名付けました。実は、この娘の名前は私たちの地域の歴史的な伝説のヒロイン「マラライ」の名にちなんだものです。なぜ、その名前にしたのかというと、私は娘が父親や兄弟、夫といった“男性の付属品”として生きるのではなく、自らの意志で自分の名前で生きていって欲しいという願いを込めたからです。そして、娘が自分の人生の扉を開くための唯一のカギになるのは教育であると、私は信じていました。

娘が生まれたとき、私の従兄弟が家系図を持ち出してきました。その家系図に記されているのは男性の名前だけ。女性の名前は一切、記されていなかったのです。そこで、私は家系図の自分の名前の下に線を引きました。そして、私の娘の名を記したのです。マララと……。




  
 

【家族のために心がけていること】


私には4人の家族がいます。2人の息子と1人の娘、そして妻。特に妻は、対等なパートナーです。妻の夫として、そして子どもたちの父親として、私はこれまで素晴らしい経験をすることができたと思っています。私たち家族の旅は、より素晴らしく愛おしく、そして、未来に向かって広がり続けています。なぜかと言えば、「皆が平等であること」「分かち合うこと」を大切にして、それをいつも心がけてきたからです。
 
私が幼少の頃、父も兄弟も家中の女性を使うばかりでした。男性が女性に食事やお茶を用意して出したりするといったことはあり得ないことだったのです。そこで、私は変わろうと思いました。「違う人間になろう!」と決意したのです。

妻が私のために何かをしてくれるのであれば、私も妻に何かをしてあげる。妻が私の服にアイロンをかけてくれるのであれば、私も妻の服にアイロンをかけてあげる。妻が食事を作ってくれるのであれば、私は違うメニューで食事を作ってあげるのです。

 
私が子どもの頃、こんな習慣がありました。家族揃って食事をする前に手を洗うのですが、男性が手を洗う時にわざわざ女性が水を汲んできて男性の手に注ぐのです。男性はただ手を出すだけで、母親など女性が運んできた水を手に注がせるのです。それが、私たちの住んでいた地域の一般的な習慣であり、家庭のなかでは当たり前のように行われていたのです。

けれども、私が結婚して初めて妻と食事をしようとしたとき、妻がやってきて、私の手に水を注ごうとしました。その時、私は妻の手に触れて、止めました。「あなたは、そんなことはしなくていいんだよ。僕は自分で手を洗うから」。「手なんか、自分で洗えるよ。なぜ、わざわざ君が手伝わないといけないんだい?」と。


そう言うと妻はとても戸惑いましたが、「もういいんだよ。私が死ぬまでしなくていいから。なぜなら、この風習が僕は嫌いなんだ」と伝えました。




  
 

【強い経済を目指すことより大切なこととは!?】


今日、ここにやってきて、私はスーパーダディ協会のみなさんからお話を聞いてとても驚きました。なぜなら、日本は先進国であり、経済大国であるにも関わらず、男女がまだまだ平等ではないと聞いたからです。

それぞれの国や社会が強い経済を目指すのは、とても大事なことです。しかし、国や社会にとって最も大切なことは何でしょうか? これは私の個人的な考えではありますが、それは「人」だと思います。つまり、お金よりも人々の幸福のほうが大切なのです。

フィンランドやスウェーデン、ノルウェーといった北欧の国々は、アメリカや中国、日本のような経済力はありません。しかし、北欧の国々はいつも幸福度ランキングでは上位にあります。これから私たちが追い求めるべきは、経済的な富ではありません。目指すべきは、“人々の幸福“”なのです。いくら富を分け合っても、すべての人々が幸福になれないのであれば、そればかりを追い求める意味はありません。

みなさんが目指している「スーパーダディ」とは、「家庭内の平等」を大切にしている。そして、そのために尽くしている人たちだと解釈しました。このスーパーダディのシンボルマークである口ひげは、家父長制のシンボルでもありますよね。妻にも子にも厳しくあれ、という意味合いです。でも、私はその口ひげを生やしたフェミニストなんです(笑)

  
 

【男女格差を終わらせるために親ができること】


家族のなかにある不平等、男女格差を終わらせるため必要なことは何でしょうか? それは“愛”です。事あるごとに男性と女性の役割を分け、事あるごとに夫と妻の責任を分ける。そうではなく、私は男性と女性、あるいは妻と夫で「共に責任を果たしていこう」と思っています。それこそが、家族に幸福や繁栄、喜びをもたらせてくれるのです。例えば、私が深夜にグッスリ寝ていたとしても、妻が一杯の水を欲しているのであれば、起き上がって汲んできてあげる。そんな時の“ささやかな幸せ”は、何ものにも代えがたいものです。

今日はこんな素敵なイベントにお招きいただき、とても感謝しております。スーパーダディ協会はまだ小さな団体だと思いますが、きっとこれからどんどん成長していくことでしょう。父親である協会のみなさんにとって大切なことは何でしょうか? それは、子どもたちに「行動で示す」ことです。正義とはどういうことなのか、平等とはどういうことなのか、そして、愛とは? 尊敬とは? と……。そういったことを家族のなかでジェンダーの区別することなく平等に行動で示していって欲しいと思います。

 



スーパーダディ協会のみなさんの信念と、私が持っている信念は同じものであると信じています。私はみなさんほどのスーパーダディではありませんが、日々、最善を尽くしています。子育てとは、毎日、毎日……、日々の積み重ねです。良き父親、あるいは良き母親であるために、毎日、努力を続けているのです。

日本はITや技術革新、あるいはロボット技術などで世界をリードし続けています。それと同じように、いつか日本のスーパーダディたちが“世界の父親像”をリードする日がくることを期待しています。今日はこんな時間をくださってありがとうございました。素敵なお花のアレンジメントも楽しみましたし、皆さんと素敵な時間を過ごすことができました。本当にありがとうございました!

 

(質疑応答編につづく → )

 

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